さよなら大丸心斎橋店本館、ヴォーリズの百貨店最高傑作、最後の見学会
大丸心斎橋店本館は建築家ウィリアム・ヴォーリズが設計した近代建築。
設計したウィリアム・メレル・ヴォーリズは神戸女学院、関西大学をはじめとする学校や教会など今でも街を彩る多くの西洋建築を日本に残してくれた建築家でメンソレータムで有名な近江兄弟社の創業者の一人でもある。
大丸心斎橋店本館が竣工したのは1922(大正11)年。
日本の百貨店の最高傑作といわれるゴシックな外観とアール・デコの内装で歴史的価値がある建物が改装のため2015年末で閉館する。その後は解体されて新しく建て替えになる。
解体工事の前に大丸・松坂屋のカード会員限定で大丸心斎橋店本館1階の見学会が開催された。カード会員限定といっても即日発行の無料ポイントカードでも参加できるため誰でもウエルカムな見学会。

情報を知ったのはツイッター。
フォロワーさんからの情報で大丸心斎橋店の見学会を知ったのはわずか数日前。ライブな情報にはツイッターは活躍しまします。
時間前に到着して行列イケフェスほど並んでいない。
まだ余裕がありそうだから並ぶ前に外観を観にひと廻りしてくる。
大丸心斎橋店本館外観の装飾
大丸前の交差点からは御堂筋側の外観はネオ・ゴシック様式の重厚な外観が望める。
花崗岩とスクラッチタイル、最上階のテラコッタで作られたレリーフが大正感を醸し出す。

玄関は雪の結晶風の装飾が直線的に施されている。
上にはクジャクのレリーフ。

さらに上には3羽の鷹とペリカンがとまってる。

「クジャク」のレリーフ
心斎橋筋側のアーケードに面した玄関にあるのが「クジャク」のレリーフ。
孔雀は今も大丸のシンボルとしてデザイン化したマークが使われている。
当時、アメリカの会社にフェニックスを注文したところ、何かの事情でクジャクが納品されたと言われている。

テラコッタの緑色や黄色が鮮やかで美しいクジャク。

孔雀の周りは植物や鳥獣が細かな装飾で施されてる。


鳥が果物をたべてる立派なキーストーン。

雷文もおしゃれな感じ。

百貨店最高傑作の装飾 大丸心斎橋店本館
見学会の開始時間が迫ると続々と列が伸びていき大丸心斎橋店への愛着の高さが伺えます。
受付を済ませて館内に入ると別世界!
きれいに片付けられて煌びやかなアール・デコ様式の空間が広がっていた。
誰かがツイッターで言ってたけどまるでダンスホール。

これぞ百貨店、最高傑作の風格
見学会の開始直後はみんなで空間を共有。

誰もがほかの人の撮影の邪魔にならないように後ろから撮影。
誰もいない広々としたエレベータホールやフロアをみんなで撮影できたのがとてもよかった。
アール・デコ装飾
単純で直線を強調した装飾美術をアール・デコといいます。
三角形、ひし形、円形、多角形などを組み合わせて幾何学的パターンを重ねたアール・デコの華やかな装飾はどこを切り撮っても誰が撮ってもアート。

保存してほしい装飾のひとつが天井の鷹。
全てを見通すホークアイは百貨店の売り場を見守っていた金色の鷹。明日から暫く翼を休める。

エレベータ
アーチ型を使った装飾で左右対称のシンメトリーになっている。
こんな素敵な装飾ならエレベータを待っている時間も楽しかっただろう。

エレベーター階数案内板は時計の文字盤のようで斬新。
大正レトロな感じが溢れてる。

エレベータ上の時計は六芒星を組み合わせた装飾。
魔除け的な意味もあるのかな。館内で唯一、カラフルな色彩に目を奪われる。

柱の装飾もスバラシイ。
梁は六芒星の幾何学模様を交互に並べてるだけなのに雰囲気満点。
派手な電飾だと落ち着かなさそうだけど長い時間いても不思議と嫌な感じはしない。

階段室
戦時中の金属供出により手すりは木製。温かい感じがする木はヴォーリズ建築にマッチ。
親柱はもちろんアールデコ様式で装飾されてる。

階段室のちょっとしたスペースに水場がある。
当時は水場を設けることがモダンだった。

アーチの内側や柱の装飾も電飾。細かいところまで美しい芸術作品だ。

ステンドグラス
館内には見事なステンドグラスの数々。
御堂筋側は、イソップ物語の「狐と鶴」
「狐と鶴」の物語は善意も思慮が足りないと相手を傷つける。という話だ。

悪夢を見ちゃうほど狐も鶴もコエェ!

心斎橋筋側は、ティファニー社が製作したとも言われているようだ。

大丸の社章
忘れちゃいけないポイントがブロンズの大丸社章の「七五三ひげの大丸」
大の字をよく見るとおめでたい七五三にちなんで7・5・3の”ひげ”がついてる。

七五三ひげの大丸の脇にはイソップ物語の「兎と亀」
着実に進むことで大きな成果を得られる。という物語だ。

天井はイスラム様式の幾何学模様アラベスクで装飾されている。

大丸心斎橋店本館1階見学会のまとめ
大丸が見学会を開催してくれたおかげで今までゆっくりと見ることができなかった館内を自由に見学できました。
必要以上に説明パネルもないし案内する人もいない。
時間制限もないので、それぞれが思いのまま好きなだけ見たり写真を撮ったりできました。
多くの人に内装を公開して写真も自由に撮らせちゃうとSNSなどで良くも悪くもいろんな意見がでてきます。
それでもあえて最後に公開してくれたのは、
先義後利
利よりも先ず義。大丸の業祖、下村彦右衛門の理念である。
きっと今まで大丸心斎橋店を支えてくれたお客さんの義に応えたのだ。
大丸は、心斎橋店の価値を知っています。
誰もが無くなるのが惜しいと思っている大丸心斎橋店をきっと今と変わらぬ姿で改装してくれると期待したい。新しくなる「大丸は義商なり」を楽しみにしています。
大丸心斎橋店本館の解体前に見学できる機会を与えてくれた大丸心斎橋店に感謝したい。
SNSには、いい写真がたくさんアップされていた。みんなが撮った傑作写真を集めるといい写真集になりうそう。
大丸心斎橋店本館の洋館手帖
竣工 | 1922(大正11)年 |
設計 | ウィリアム・ヴォーリズ |
建物 | 登録有形文化財 |
所在地 | 大阪府大阪市 |
見学情報 | 2016年解体(外壁保存) |